大阪CLの全データをAIに学習させてみた

AI実装

「このデッキ、理論上は最強のはずなのに、なぜか本番で勝てない……。」
ポケカプレイヤーなら、誰しも一度はそんな壁にぶつかりますよね。実はうちの子供たちがチャンピオンズリーグ(CL)などに出場してガチ対戦をしているのですが、環境が高度化しすぎて「感覚的な構築」だけでは限界に達していると感じていました。

運の要素も大きいカードゲームですが、数千、数万という対戦データを紐解けば、そこには必ず「勝率に直結する変数」が隠れているはず。

そこで今回は、仕事で扱っているデータサイエンスの知見をフル活用し、Pythonを駆使して「デッキパワー」をガチ分析してみた過程をシェアしようと思います!LGBMRankerによる順位予測と、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた最強デッキの探索。趣味の域を超えた、データ駆動型のポケカ戦略解析です👍

分析の背景と目的:感覚から「客観的評価」へ

なぜポケカの分析にAIが必要なのか。それは、単に「1枚の強いカード」を入れただけでは勝てず、「デッキ全体の構造的な強さ(安定性や妨害力など)」が求められるからです。

今回は、大阪CLの入賞デッキデータを読み込み、それぞれのデッキが「なぜ強いのか」を多次元的なパラメータで客観的に評価し、安定した勝率を叩き出す「黄金比」を見つけることを目的としました。 

特徴量エンジニアリング:全カードのステータス化

データ分析において一番の腕の見せどころは、いかに「ポケカのルールやセオリー」をAIが理解できる数値に落とし込むかです。今回は収集した大阪CL入賞デッキの各カード情報に対して、手動で以下の**基本ステータス(8項目)**を付与し、マスタデータを作成しました。

  • attack(攻撃力): ワザの純粋なダメージや突破力。
  • search(サーチ): 山札から必要なカードを持ってくる力。
  • durability(耐久): HPの高さや、倒されにくさ。
  • disruption(妨害): 手札干渉やエネ破壊など、相手の動きを止める力。
  • ability_score(特性): システムポケモンなどが持つ特性の強力さ。
  • versatility(汎用性): どんな状況・対面でも腐らずに使える度合い。
  • energy1 & energy2(エネルギー要求値): ワザを撃つためのコスト。

💡ここがポイント:逆説的な指標の扱い ポケカ特有のドメイン知識として、「energy1(エネ1)」「energy2(エネ2)」は、数値が低い(=少ないエネで動ける)ほど優秀ですよね。AIは「数値が大きい=強い」と勘違いしやすいため、ここはモデル側で「数値が低いほど高評価(小さくすべき要素)」となるように特別な設計を施しています。

こんな感じ👍

さらに「相乗効果(シナジー)」を特徴量に追加!

単体のステータスだけでなく、カード同士の組み合わせも評価するため、以下の3つの派生特徴量(Synergy)も計算させました。

  • synergy_effect(エネルギー効率): 1エネあたりの攻撃力の高さ。
  • synergy_setup(展開力): サーチ能力と特性の相乗効果。
  • synergy_control(制圧力): 耐久力と妨害力の相乗効果。

これにより、単なるカードの足し算ではない「デッキ全体の性格」をAIに教え込みました。

AIモデルの作成:LGBMRankerによる順位予測

今回はLightGBMのランキング学習モデル(LGBMRanker)を採用し、算出したデッキパワーから「大阪CLでの最終順位」を予測させるモデルを作成しました。これにより、「どのステータスの組み合わせが上位に食い込むのか」が可視化されます。

細かいハイパラなどは省略します。モデルの精度としてはR2(決定係数)でいうと、0.27と結構低いです。これはドローの運であったり、技術のバラつきなどが大きいところだと思います。ですが傾向は掴めているように判断できました。

上図は縦軸が予測したデッキパワーで横軸は各カードのデータを基にした実際のデッキパワー。このAIを使って新しいデッキにおけるパワーや、勝利の鍵を探しに行きます。

分析結果:AIが見つけた「勝率を左右する核心」

いよいよ分析結果です。AIは一体、どの要素を「勝利の鍵」と判断したのでしょうか?

Feature Importance(変数重要度)

モデルが順位予測において重視した項目をグラフ化したものがこちらです。LGBMRankerのFeature impotanceを使って各パラメータの影響度を議論するのはよろしくないので(何故かは割愛)、ここでは重回帰分析の結果の偏回帰係数を示します。

グラフを見ると、デッキパワーにプラスの寄与をしていたのは**「attack(攻撃力)」「synergy_setup(サーチ×特性の展開力)」「disruption(妨害)」でした。 一方で、赤いグラフの「energy1」は小さくした方が良い(マイナスの係数)**という結果に。やはり「少ないエネルギーで高火力を出し、サーチと特性で盤面を作り、相手を妨害する」というポケカの基本原理を、AIも正確に学習していることが分かります。

遺伝的アルゴリズム(GA)による最適解の探索

LGBMRankerで「強さの法則」が見えたら、次は遺伝的アルゴリズムを使って「理論上の最強デッキ」を探らせました。これは、優秀な配分を持つデッキ同士を合体(交叉)させ、時折アレンジ(突然変異)を加えながら、AIに最高のレシピを進化させる手法です。

(紫の太線がAIの弾き出した「理論値」、青破線がドラパルトex、ピンク破線がタケルライコexです)

このチャートから、非常に面白い「ギャップ」が見えてきました。

  • 現実の覇者:ドラパルトex(青線) 実はドラパルトexは、AIの理論値(紫線)を大きく超える**「耐久(durability)とサーチ(search)」**を持っています。対人戦特有の「手札事故」や「相手からの妨害」を、理論上の効率を捨ててでも力でねじ伏せる、圧倒的な安定感が現在の最強の座を支えていることが分かります。
  • 理論上の理想:タケルライコex(ピンク線) 一方で、GAが導き出した「攻撃性能とエネルギー効率の極限追求」という理論値に最も近い形をしていたのが、たね軸のタケルライコexでした。無駄を削ぎ落とした「最速・最高効率」の形であり、プレイングが極まれば速度で環境を上回る**「次世代の正解」**になり得るポテンシャルを秘めています。
💡 Aha!(気づき) 攻撃性能が高いのは上位陣ではもはや前提条件。実際の勝負を分けていたのは、盤面を確実に作り上げる**「安定性(サーチと耐久)」**だということが、データから見事に証明されました。

おわりに

かつては「勘」や「調整量」頼みだったデッキ構築。今回改めて実感したのは、データ分析の最大の強みは「無数にある選択肢に対して、客観的な重み付けができること」です。根拠を持って選択し、迷いを減らすための強力な武器を手に入れることだと思います。

ポイントは、ここまであまり触れませんでしたが、カード毎にどのような数値を付与するか、また交互作用をどのように表現するかです。そういった意味では今回はデータの作りこみは甘いので、まだまだ改善の余地はあると思います!

データサイエンス×ポケカ、奥が深くて最高に面白いです!これからもどんどん深掘りしていこうと思います👍

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